“時”を表す機構 No.2

前回は時を表す機構として カレンダーについて簡単にご紹介しました。⇒前回記事
今回はカレンダー以外の機構について焦点を当てたいと思います。
時計のメイン機能はやはり“時刻”を表すことです。その時刻を表すという機能に特化したものに絞っても、様々なニーズにこたえる形で色々な機構があります。
多いのは“世界に目を向けた”もの。現在自分の居る時刻帯だけではなく、他の国の時刻も知りたいという要望が多かったようで、
それに応えた機構が存在します。もともと時計は特にビジネスパーソンの必需品でもありましたから、世界をまたにかけるビジネスマンからこのような要望が多かったとしても納得です。
今回は他の時刻帯の時刻を同時に知ることが出来る時計にも、様々な機構や呼び名があります。今回は一番ポピュラーかと思われる2か国の時刻を知ることが出来る時計を中心にご紹介します。
◆ GMT
機構通常の時針とは別にGMT針と呼ばれる針を用いて、現在自分の居る時刻帯の時刻と、別の時刻帯の現在時刻(第二時間帯)の二つ(もしくはさらにもう一か国分の三つの時刻)を表示する機構です。
ロレックスのGMTマスターが有名ですので、目にしたことがある方も多いでしょう。しかし、目にしたことはあるものの、どういったものかはわかっていないという方も多いのではないでしょうか。
そもそも「GMT」とは、Greenwich Mean Time(世界標準時)の略称です。この世界標準時はイギリスロンドンのグリニッジ天文台の経度0度を基準に経度15度ごと(国境などにより変動有り)に1時間の時差を定めています。
旅行や出張に行くたびに 滞在地の時刻と自国の時間帯を計算したり、仕事で決まった海外支店と取引がある方など、何かにつけて時差を考えるのは慣れていても面倒です。そのため、一つの文字盤上で2か国ないし3か国分の時刻を一目でわかるようにした機構が“GMT”です。
いろいろな表示形式がありますが、代表的なのはやはりROLEXのGMTマスターシリーズ。
ロレックス | ROLEX | オイスターパーペチュアル GMTマスターI | 16700
特徴的なベンツ針の時針が現在地(現在メインとしている時刻帯)の時刻を表し、これを第一時間帯・ローカルタイムと呼びます。先端が矢印のGMT針でもう一つの時刻帯(旅行中なら元居た自国)の時刻を表し、これを第二時間帯・ホームタイムと呼びます。
このホームタイム指すGMT針は24時間で1周する24時間針となっており、第二時間帯が今 昼の10時なのか夜の10時(22時)なのかも瞬時に判別できるようになっています。さらにGMTマスターの場合は ベゼルが回転ベゼルであるため、GMT針に回転ベゼルを組み合わせることで第三の時間帯を表示することも可能です。
設定や読み取りの仕方はモデルごとに若干異なります。
このGMTマスターⅠは、GMT針が時針と連動して動き単独操作ができないモデルですので、GMT針がホームタイムの時刻を指すように回転ベゼルを動かして設定します。
時計の時針が指すローカルタイム、GMT針が指す回転ベゼルの時刻がホームタイムで2つの時刻帯を表示できます。時差マイナス9時間のロンドンへ赴いた際は 現地ロンドンが深夜1時の時日本が朝の10時の為 こちらのようになります。

GMTマスターⅡのように時針を単独で動かす機能があるものは 第三時間帯まで表示することが可能です。ややこしく思えますが、設定は非常に容易で機能性に優れています。自国にいる際は GMT針と通常の時針がさす時刻を合わせておき、旅行先で時差の分時針(ローカルタイム針)を動かすだけです。
ロレックス | ROLEX |オイスターパーペチュアル GMTマスターII | 126710BLRO |
例えば上記の左写真の状態は ローカルタイム・ホームタイムともに昼の10時を指しており両方の時刻があっている状態ですので、ロンドンに赴く際は時針を単独でマイナス9時間すれば、現地ローカルタイムが深夜1時、ホームタイム(東京)が10時になりこれで設定は完了です。

第三時間帯を設定するには、この時に回転ベゼルを動かします。上記の時GMT針が昼12時を示すよう反時計回りに回しておけば、東京+2時間の時差のシドニーの時刻になります。
これにより
・文字盤上で時針がさす第一時間帯 (深夜1時)
・文字盤上でGMT針がさす第二時間帯 (午前10時)
・GMT針がベゼルで指し示す第三時間帯 (昼12時)
の三つの異なる時時刻帯の現在の時刻を一目で知ることが出来るようになります。
同じくロレックスのエクスプローラーⅡも、GMTマスターⅡと同じムーブメントが搭載されたことで時針を単独で動かすことが出来るようになり、GMT機能が追加されました。ただしこちらは回転ベゼルではない為、時針とGMT針で指す第二時間帯までの設定です。
ロレックス| ROLEX | オイスター パーペチュアル エクスプローラー II | 16570
ロンドン深夜1時をホームタイム、日本を10時に設定すると以下のようになります。

また、グランドセイコーのヘリテージモデルシリーズのGMTモデルは、ベゼルではなく文字盤外周に24時間表記がされています。表示の仕方はベゼルが回転しないエクスプローラーⅡと同じです。
グランドセイコー SBGE289 ヘリテージコレクション 和光75年限定モデル
◇トラベルタイム
GMT機構を搭載する時計をパテックフィリップは「トラベルタイム」と呼びます。
パテックフィリップが誇りをもってそう呼ぶのは、特許技術を用いた他とは一線を画すモデルだからです。
通常のGMTモデルはGMT針を動かして時刻を合わせるのにリュウズを使用します。リュウズの位置によって通常針とGMT針の操作を使い分けて設定するので、慣れないと少し煩雑に感じることもあるでしょう。これをプッシュボタンの操作で直感的に行えるようにしたのがパテックフィリップのトラベルタイムです。「複雑な機構をいかに簡単にするか」はパテックフィリップの企業理念の一つでもあり、ユーザーが簡単に操作をするために、機械はより複雑になっています。そのため、一般的になりつつあるGMT機構ですがパテックフィリップにおいては「トラベルタイム」として超複雑機構のラインナップである“コンプリケーションウォッチ”にカテゴライズされています。
現在当店でご覧いただけるのはこちら。

パテックフィリップ | PATEK PHILIPPE |5990/1A-001 |ノーチラス トラベルタイムクロノグラフ
スケルトン針が第二時間帯を表すGMT針で、3時位置と9時位置にそれぞれの時間帯の昼夜表示窓があります。操作は9時位置のプッシュボタンワンタッチという手軽さ。そして12時側のインダイヤルで日付を表示、さらにクロノグラフ機構も搭載された超複雑機構時計です。
◇UTC
MGTと非常によく似たもので「UTC」という機構の表示があります。「UTC」とはUniversal Time Coordinated(協定世界時)の略称です。GMTが天文観測(地球の自転)をもとにした世界標準時であるのに対し、セシウム原子時計によって刻まれる国際原子時を基にしているのが協定世界時・UTCで、GMTの地球の自転による誤差を修正したものといえます。
一般的にはGMTという名称が知られていますが、実は現在の世界の標準時刻は 協定世界時・UTCを基準にしています。ただ、時計の機構においては GMTもUTCもほぼ同じです。
この IWCのフリーガー UTCは、文字盤上でローカルタイム、12時位置の窓でホームタイムを表します。6時位置に記された「TZC」とは、Time Zone Corrector の略で、時針の単独操作機能がついていることを指しています。
IWC | INTERNATIONAL WATCH COMPANY | フリーガー UTC | 3251-003(IW325103)
実は同じく文字盤上で2か国の時刻を表す機構だけでもまだあります。
次回はそのもう一つの機構、そして2か国にとどまらず なんと文字盤上で世界中各地の時刻を読み取ることが出来る機構をご紹介しようと思います。
色々なブランドの様々な機構の時計を実際に見て比べられるのは当店のような並行輸入店の強みでもあります。
色々な時計へ興味を持っていただけた際には、ぜひ店舗へお越しいただき直接ご覧くださいませ。



