匠のベゼル IWC アクアタイマー

ダイバーズウォッチは、その名の通り「ダイバー」が使うための時計として誕生しました。
しかし、その優れた機能性と精悍なデザインは、いつしか一般ユーザーを魅了し、定番の人気ジャンルとして確固たる地位を確立しています。
また歴史を語れるというのもダイバーズウォッチの魅力です。
1953年に誕生したロレックスのサブマリーナー、ブランパンのフィフティファゾムスは、愛好家の間ではたびたび、どちらがダイバーズウォッチの祖であるかという論争が起こります。
いずれにせよこの2大元祖が提示したスタイルは、ダイバーズウォッチのお手本として確立され、現代まで受け継がれてきました。
今回ご紹介するIWC アクアタイマーもまた、歴史あるダイバーズウォッチの1つです。
機械式時計の古くから弱点であった“水”に対して、メーカー各社はどのような対策練っていたのか、IWCはどのように克服していったのか。
現行のIWC アクアタイマーを、初代アクアタイマーから遡り、まとめてみたいと思います。
初代アクアタイマー

IWC 初代 アクアタイマー Ref.812AD/1812(参照:IWC公式サイト)
1960年前後、腕時計業界ではダイバーズウォッチの開発競争が活発化。
名門ブランドが次々と実用的なモデルを世に送り出すなか、IWCはこの分野においてやや出遅れた存在でした。
そんなIWCにとって初となるダイバーズウォッチ「アクアタイマー」Ref.812AD/1812が登場したのは、1967年のことです。
アクアタイマーに採用されたのは、当時ダイバーズウォッチ用防水ケースの名門として知られていたErvin Piquerez SA エルヴァン・ピケレ(EPSA)社のケース。
EPSA社はロンジンやルクルトなど、数多くのメーカーに防水ケースを供給しており、IWCもその供給先のひとつでした。
EPSA社が手がけた防水ケースは、水圧を受けるほどに気密性が高まる特許構造を持ち、当時としては非常に先進的なものでした。
さらに、ケース2時位置のリューズで操作するインナーベゼルを備えており、ダイビング時の視認性と安全性にも配慮された設計となっています(上記で挙げたロンジンはレジェンドダイバー、ルクルトはメモボックスと、いずれも2・4時位置にリューズを備えているのも、EPSA社が手掛けたケースの名残です)。
IWCも他社と同様にEPSAのスーパーコンプレッサーケースを採用しましたが、後発では終わらせず、独自性の追求にも力を入れました。
その象徴的な要素が「CAT」と呼ばれる特殊な防水構造です。
CAT構造は、リューズ内部にラバーを充填し、圧力がかかると内蔵されたラバーとバネが収縮することで気密性をさらに高める仕組みになっています。
このCATリューズとコンプレッサーケースを組み合わせたことで、初代モデルから200m防水という当時としては十分高い防水性能を確保することに成功しました。
IWCはこのモデルで、サブマリーナーやフィフティファゾムスに挑むことを決意したのでしょう。
ムーブメントには、IWCが誇るペラトン自動巻き機構を備えたCal.8541Bを搭載しており、防水性能とムーブメントの両面で他社とは一線を画す完成度を備えたモデルでした。
その後もラインナップを拡充し、1968年にはRef.812/812ADと並行して、クッションケースを採用したRef.816/816ADを発表。
CATリューズをそのまま継承しつつ、気密性を高めた裏ブタとミネラルガラス風防を採用することで、防水性能は300mへと向上しています。
また1982年にはポルシェデザインと共同開発したオーシャン2000を発表し、その技術を生かしてGST アクアタイマーが誕生、リシュモングループ傘下に入った2000年以降はさらにスポーティーにブラッシュアップされていきました。
こだわりのベゼル

現行アクアタイマーの最大の特徴は、IWC独自の発想から生まれた「セーフダイブ・システム(インナー+アウターベゼル)」を搭載した画期的な回転式ベゼルです。
ダイバーズウォッチが用いる回転ベゼルには、インナーベゼルとアウターベゼルの2種類存在し、それぞれにメリットがあります。
インナーベゼルはアウターベゼルに比べて、より針に目盛りが近いため瞬時に潜水時間が把握できるというメリットがあります。
またガラスの下に配置することで潜水中に誤って動かしてしまうことを防いでくれます。
一方アウターベゼルは、リューズを使わないと動かせないインナーベゼルに比べて、容易に操作が行えるというメリットがあります。
この双方の長所を良いとこ取りした時計こそ、IWCのアクアタイマーです。
搭載されたセーフダイブ・システムは、ケース内にラチェット機構を組み込むことでアウターベゼルは両方向に回転させることが可能なのですが、時計回りに動かした際はインナーベゼルと連動されずに空回りする仕組みになっています。
つまりダイバーが誤ってベゼルに触れてしまっても、設定した潜水時間が短縮されるリスクを抑えています。

逆回転防止にすればいいのではと思うかもしれませんが、IWCはあえてこのセーフダイブ・システムを採用しており、それを実現するための仕組み「スライディング・クラッチシステム」を9時位置にカプセル化しています。
このシステムは簡単に言うと、後ろに回すときは空回りする自転車のペダルのような仕組みです。
腕に装着したまま回転ベゼルを回すとき、逆回転防止の機能があると、回した後に手を離して、再度回すという動作を繰り返すことになります。
しかし空回りすれば手を離すことなく行ったり来たりすることで、目的の時間までベゼルを進めることができるのです。
またこのカプセルには小さな穴が開いており、真水を流し込むことで海水や砂など、インナーケースを洗浄できる作りになっています。
もちろんムーブメントには水が入らない構造で、ケースの内部まで清潔を保てるというのは嬉しいポイントです。
このカプセル内の「スライディング・クラッチシステム」は、形状が異なる歯車をいくつも組み合わせた複雑な構造で、設計も組み立てもムーブメント担当者が行っていたそうです。
より高効率な動きでミッションを可能にするためにユーザーに寄り添ったIWCの努力が詰め込まれています。
実際に使うと軽快なクリック感が心地良く、ツールウォッチの楽しさに浸ることができます。
インナーベゼルの視認性、アウターベゼルの操作性、そして安全性。
初代モデルで採用されたEPSA社のケースの特徴である2・4時位置のリューズを過去の遺産として受け継ぐ選択肢もあるなか、抜本的に見直し、新生アクアタイマーではユーザーの理想を叶えるベゼルを開発したのです。
現行 Ref.IW328801

今回ご紹介するIW328801は、旧作と見た目は大きく変わらず、自社ムーブメント搭載モデルとなりました。
機能としては時分秒にデイト表示を加えたスタンダードなものですが、脱進機にシリコン素材を用いることで耐磁性を向上、さらにパワーリザーブは約42時間から約120時間(5日間)に延長されました。
パワーリザーブに加えてラバーストラップがご自身で簡単に取り外しできるため、実用性は文句なしです。

外装の多くをサテン仕上げにすることでスポーティーな雰囲気になっていますが、角やポイントごとにポリッシュ仕上げを施すことで高級感も演出。
ダイバーズウォッチでありながら、落ち着いたブルーは日常使いしやすいデザインにまとめてくれています。
そして表から見たときのベゼル、インナーベゼル、文字盤と、3層からなる顔つきは奥行きがあって立体的な表情を楽しむことができます。
他のモデルにはないベゼルや9時位置のカプセルにも全て意味があり、IWCらしい機能美が豊富に味わえるのも魅力です。

いかがでしたでしょうか。
IWCを代表するダイバーズウォッチ、アクアタイマー。
機械式時計、そしてダイバーズウォッチの発展とともに、ケース、ベゼル、そしてムーブメントと、アクアタイマーもまた進化を続けてきました。
IWCの歴史を深く知る方にも、ミニマルで実用的なデザインを好む方にも、まさに理想的なダイバーズウォッチです。
是非、直接手に取って御覧ください。
皆様のご来店を心よりお待ちしております。
◆IWC – アクアタイマー オートマティック
【型番(型番)】IW328801
【素材】ステンレススティール
【文字盤】ブルー
【ベルト】ラバー
【ムーブメント】自動巻き/ Cal.32111
【ケースサイズ】42mm
【防水性能】300m防水
【付属品】箱・保証書
【商品の状態】未使用品
【保証】3年



